朝、目覚ましの音で目を覚ました、腕だけを動かして、必死に音の元を探す。
いつもの位置に時計を固定しておくと、癖になって一瞬で止めてまた寝てしまう事があるので、毎日適当に目覚ましの位置は変えている。
今日は比較的早く見つかった。なんとか目を開けて時間を見る。7時20分。セットしたのは7時だった気がするのだが…。既に何度かなっていたようだ。
しまった。別に普通に学校へ行くだけなら、この時間でも余裕なのだが、今朝はシャワー浴びてから学校行かなければならないのだ。
昨日は家に帰ってきたのが11時ごろで、疲れてすぐ寝てしまった。そのまま学校行くのも嫌だし、さっさと起きますか。
あぁ。。。でもヤバイ。今日は超眠い。何でだ…。あぁ。。。部活サボろうかな。そしたらまた寝れる…。と、考えつつも、ちゃんと布団から這い出す。ヤバイ眠いが仕方ない。頑張って学校へ行く準備を始めた。
今思えば、なんでこのとき気づかなかったんだろう。この決断が、今日の私の午前中の運命を決めることになる。当然、このときそんなことは知る由も無い。
家を出て約40分。ずっと自転車をこぎ続けてやっと学校に到着。
ちょうど学校の前にバスが到着した。部活の開始時間の15分前。誰か知り合いいるかな。と思いながら見ていたら、僅か降りてきた生徒は知らない人1人。少し疑問を感じながら校門をくぐった。
自転車置き場まで走っていると、セミナーハウスの方向から、部活の友人(男。ここではDとしておこう。)が、歩いてきた。
餅「おはよ〜」
D「おはよ」
D「誰も来てない。鍵も開いてない」
餅「え。マジで?部長も来てないの?」
D「うん。」
そんなはずは無いだろう。。と思うが、本当に誰も居ない。
部長はいつも早く来ているし、休日は9時集合にもかかわらず、8時近くから楽器を吹いている人もいるのだ。普通誰か居るハズなのだが…。
色々な可能性を考えてみる。
実は今日は大会だった。
事件か!
たまたま全員休み。
宇宙人の陰謀。
集合は音楽室(現在、音楽室が合唱祭の練習で使われている為、吹奏楽部は、セミナーハウスという学校の敷地の端っこにある施設で練習している)
さまざまな可能性を考え、今日の夕飯は何だろう。まで、思考が行ったとき、私の脳が、一つの答えをはじき出した。
しかし、果たしてそうなのであろうか。
この真偽を確かめるのには、少々勇気が要る。
D氏は、機器の都合により、確認をすることが出来ない。

―――私がやるしかないのか。

私は勇気を振り絞って、真偽を確認する手段を取り出した。
そして―――
餅「もしもし」
先輩「はい。」
餅「あの、今日って部活休みなんですか?」
先輩「うん。そうだよ。」
餅「あのですね、今僕とDが学校に要るんですよ。」
先輩「え。あぁ。。風邪がそよそよと吹いてるだけでしょ?」
餅「はい。どこからか運動部の練習の声が聞こえてきます。」
先輩「青春だね。」
餅「青春ですね。」
先輩「というわけで、今布団で寝てますんで。」
餅「あ、わかりました。どうも〜」
餅「今日部活休みかよ!」
あ、先輩、寝起きのところ電話してスイマセン。

暫く私とDは、絶望していた。
なにもせずには帰れない。
ここで、Dが一つ歌を詠んだ。
「安積山 影さへ見ゆる 山の井の あさくは部活 思ふものかは」
これは、最近古典の授業でならった「安積山」という話に出てくる歌で、元々の内容は
「あさかやまかげさへみゆる山の井のあさくは人を思ふものかは」
意味は、大体後半しかなくて、浅くは貴方のことを思いません。つまり、貴方を深く愛しております。という意味なのだが、そこを部活に変えて、「私は部活を浅くは思っておりません」という意味にしたのだ。
この「安積山」では、この歌を詠んだ女は、この歌を木に書き付けて死んでしまう。
なので、私たちも、入り口の前にさっきの歌を書き付けた紙を張って帰った。
紙を破き、端っこに小さい穴を開ける。そこにもう一枚破いて、細く棒状にした紙を入れて、ドアに結びつける。不安なのでノリで補強。
明日絶対落ちていて欲しくないので、多分音楽室にセロテープがあったと思うから、取りに行こう。という話になり、校舎に侵入。(ま、普通にあいてたんだけど)先生の下駄箱に音楽室の鍵があるので、取りに行って音楽室へ。
楽器庫を物色。ビニールテープ(恐らく誰も使用していない)と、ホッチキスを拝借。もう一度セミナーハウスへ。
ホッチキスで補強、ビニールテープを張ろうと…。はさみを持っていなかった…。が、ホッチキスを駆使してなんとか切る。
結局、ああだこうだやって、30分以上の時間をかけ、しっかりと入り口に固定。
明日が楽しみだな、という話をしてDと別れ、その後、約40分の帰路についた。雨が強くなった。